T-performance Blog

健康をテーマに『身体と向き合う』ための豆知識を配信していきます。

肩関節周囲炎って何?病態とリハビリについて

肩関節周囲炎

肩関節周囲炎に関する投稿です。 四十肩や五十肩など経験された方も多いのではないでしょうか。 一度発症してしまうと改善までかなりの時間を要してしまい、不安になってしまうことから多くのご相談をいただきましたのでまとめました。

1.肩関節周囲炎とは

 肩関節周囲炎とは、何らかの原因で関節を構成する骨、軟骨、靱帯や腱など肩関節周囲の組織に炎症が起きることが主な原因と考えられています。 50歳前後の男女に好発しやすく、 いわゆる『四十肩』『五十肩』とも呼ばれます。若ければ30代から出現することもあり、その病態はさまざまな要因が影響していると言われています。

一般的な経過として、約6ヶ月〜2年前後で自然治癒すると言われていますが、「放っておけば治る」と甘く考えていると、肩が挙がらない、力が入りにくいなど運動障害が残ってしまう恐れもあります。 また、症状が改善しても、不良姿勢や生活習慣の乱れなどで肩へのストレスが続くと再発することもあります。

2.原因と症状について

 明らかな原因は不明ですが、 靭帯や腱、関節包、滑液包、骨、軟骨など肩関節を構成する組織に炎症が起きることで痛みや拘縮につながります。 経年的な日常生活や仕事、趣味活動など、くり返す肩への負担や刺激により発症しやすくなります。 日常動作で肩を痛め炎症や不動が長引く場合や、姿勢不良や肩への負担が大きい場合、糖尿病の既往がある場合などにより、肩関節周囲炎につながりやすくなると考えられます。 肩関節周囲炎は、その他疾患に関連して生じる広義の意味と明らかな素因なしに発症する狭義の意味に分けられる場合があります。

理学療法診療ガイドラインでは、類似する疾患として以下のように分けられています。

烏口突起炎/上腕二頭筋長頭腱炎/肩峰下滑液包炎/肩関節腱板炎(変性性、外傷性)/石灰沈着性腱板炎/肩関節拘縮(拘縮肩)/関節包炎/凍結肩/肩鎖関節炎/腱板疎部炎 など

類似した疾患、広義の肩関節周囲炎にはこれらが含まれ、複数同時に発症している場合もあります。

【症状】

 主な症状は痛みと可動域制限です。進行するにつれてこの2つにより日常生活に大きく支障をきたしてしまいます。

  • 痛み
  • 安静時痛:じっとしてても痛いなど安静にしている時に出る痛み

    動作時痛:急に手を動かそうとすると痛い、など肩を動かした時に出る痛み

    夜間時痛:痛くて寝れない。目が覚めてしまう、など夜間・睡眠時に出る痛み

  • 可動域制限
  •  最初はゴリゴリとした音がなるなどの症状から始まります。 炎症の出現とともに痛みで制限がかかり、拘縮が進むと固まったように動かなくなります。

    3.病期について

    大きく分けて炎症期、拘縮期、回復期の3つに分類され、それぞれ特徴が異なります。

  • 炎症期(その他の表現:急性期、痙縮期、凍結進行期)​
  • 期間:約2〜9ヶ月​

    炎症が出現し、痛みが強くなる時期です。 増悪すると動かした時の痛みだけでなく、肩がジンジンする・ズキズキするなど夜間時や安静時にも痛みが出現します。

  • 拘縮期(その他の表現:凍結期)
  • 期間:約4〜12ヶ月

     可動域制限が主な症状となり、あらゆる方向の可動域が制限される拘縮が進行する時期です。 炎症が鎮静化し、強い痛みは徐々に落ち着いてきます。過度に引っ張ると強いつっぱり感を感じます。

  • 回復期(その他の表現:慢性期、解凍期)​
  • 期間:約​6〜9ヶ月​

     運動時痛や可動域制限が次第に回復、改善に向かう時期です。 可動域制限や痛みが徐々に改善に向かうためセルフでのストレッチや運動が実施しやすくなります。

    4.治療方法について

     肩関節周囲炎は個人差が大きく、症状が出現する期間もさまざまです。 自然に治ることもありますが、放置すると日常生活が不自由になるばかりでなく、関節が癒着して動かなくなることもあります。

    痛みが強い急性期には、安静を計り、消炎鎮痛剤の内服、注射などが有効です。 急性期を過ぎたら、温熱療法(ホットパック、入浴など)や運動療法(拘縮予防や筋肉の強化)などのリハビリを行います。 これらの方法で改善しない場合は、手術が勧められる場合もあります。

    【保存療法】

  • 薬物療法​
    1. 内服:​​
    2. 非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)などから行われます。 経口接種するだけでなく、湿布薬などの外用薬も用います。

    3. 注射:​
    4. 肩の関節内、肩峰下など主に痛みが強い場合に行います。 ステロイドや局所麻酔薬、ヒアルロン酸ナトリウムを用います。

  • リハビリテーション​
  •  時期によっても異なりますが、炎症、痛み、拘縮などを改善、予防することを目的として可動域訓練、 筋力訓練などの運動療法だけでなく、物理療法や日常生活指導も行います。

    肩関節周囲炎のリハビリ
    1. 炎症期のリハビリ
    2.  炎症や痛みの改善、拘縮予防を目的として実施します。無理に運動を行うと炎症を増悪させ、痛みや拘縮を助長させる危険性があるので注意が必要な時期です。 炎症や痛みが強い時期になるため日々の炎症や痛みの変化、注射や薬物治療の効果をみながらリハビリメニュー(可動域訓練、生活指導、物理療法など)を組んでいきます。 まず可動域訓練として、肩が動かせない時期は肩甲骨(肩甲胸郭関節)の運動をしっかりと行う必要があるため、炎症が増悪しない範囲で実施していきます。 また脊柱・胸郭・骨盤などの柔軟性が低下していると間接的に肩への負担を助長してしまうため、肩以外(患部外)の動き改善するリハビリも並行して進めていきます。

       炎症期は痛みの増悪や患者の不安感も増長しやすいため生活指導やポジショニングも欠かせません。 日常での腕の使用方法や就寝時の腕の位置などを調整することで、痛みが少なく過ごすことが出来ます。 脇を閉じたまま肘から先で家事を行ったり、睡眠時は肘の下にクッションを入れたり、横向きで枕を抱くように寝るなどの様々な工夫ができます。 物理療法では、アイシングや微弱電流、超音波(リーパス)などを行います。自主練習は、自分で筋肉をほぐしたり、 炎症が増悪しない範囲で屈曲や外旋方向への持続的なストレッチなどをゆっくり行います。

    3. 拘縮期のリハビリ
    4.  拘縮が出現・進行し始める時期であり、予防・改善のために徐々に積極的なリハビリを行うことが必要です。 炎症期と比べると痛みが軽減している時期であるため、少しずつ肩関節の運動を増やしていくことが可能です。 リハビリ前後など症状が出た時に内服するなど、薬物治療が減る傾向にあります。炎症が軽減している場合、患部の血流を改善し動かしやすくする温熱療法などが開始されます。

       可動域訓練では、肩関節(肩甲上腕関節)の拘縮を改善させていきますが、無理やり可動域を改善しようとすると、痛みや防御性収縮(痛みなどの防御反応として力が入ること)が起こってしまいます。 痛みや防御性収縮が出現すると肩に疲労感が出たり、拘縮に対するストレッチができずリハビリの進行を妨げるため、身体の状態に合わせて負荷を調整していきます。 この時期の日常生活では、肩の動きは制限されながらも動かせるようになってきますので、痛みのない範囲でしっかり動かすセルフケアも改善のためにとても大切な要素になります。

    5. 回復期のリハビリ
    6.  痛みの質が大きく変化し、可動域の改善が徐々に見られ回復へと向かう時期です。 回復と言っても、拘縮や筋力低下、時には痛み(つっぱりや引っかかるような痛み)が残存する場合があります。 そのため、拘縮期の後半から回復期にかけて積極的なリハビリを行うことが重要です。 目標とする仕事やスポーツ競技へと復帰するための動作練習などを積極的に実施していくのもこの時期からがおすすめです。 

       患部を下に横向きに寝ると違和感がある、背中に手を回しにくい、上まで手を挙げきれないなど、軟部組織(筋肉や皮膚)の硬さによる症状が残存しやすい時期でもあるため、しっかりと拘縮を改善させきる必要があります。 また再発予防のため肩関節周囲の運動を継続的に行い、習慣づけることも大切です。 日常生活では、肩に無理が無ければ生活でどんどん使用し動かしていくことが望ましく、生活の中で肩を動かす頻度が増えることで、症状のさらなる改善を促進することが期待できます。

    【手術療法】

  • 肩関節鏡手術​​
  • 非観血的授動術(力で肩を動かして関節の袋を破く)​
  • など
    5.理学療法士からのメッセージ

     肩関節周囲炎は長時間の同じ姿勢や重労働、体力低下に伴う姿勢の乱れなど何らかの原因で肩甲骨周囲の筋肉が硬くなり、組織が擦れることによって痛みや可動域の制限が起こってしまう疾患です。 発症当初は痛みが出てもすぐ改善するなどの軽い症状が多いですが、症状が進行するにつれて可動域の制限や安静時の痛みなどが出現し、日常生活に支障をきたしてしまいます。 そのため軽い症状のうちに痛みの原因を明らかにして早期治療すること、日頃からご自分の身体に目を向けてケアを徹底することがとても重要になります。参考になれば幸いです。

    ===========================

    公式LINEでも無料相談等実施しております❗️是非ご活用くださいませ✨

    公式LINEはこちらから

    ===========================